ウォン美音志との対話(その3) 2008年 11月 25日 後藤 誠 氏ブログにて公開


■ジャケットについて
――ジャケットは生後14ヶ月で書いたものだとか?
美音志:そうみたいですね(笑)。でも、ちょっとは覚えがある。
――すごい記憶力ですね。
美音志:「自分がそれを書いた」というつながりは分かるんですよね。
――コレは「俺の絵」だと。
美音志:そういえば「こんな絵を書いていたな」と。他の人が書いたものなら、これ俺が書いたの?とはあんまり思わないですね。
――アルバムのタイトル「内なる旅」は?
美音志:自分で決めました。
――そうですか。「内なる旅」というのは結構意味深なタイトルだと思います。
いま自分が何者か、が分からない人って多いでしょう。
そういう状況の中で、音楽が果たせる役割というのは、何もないようで、実は大きいんじゃないかなと、私は思います。
もちろん音楽そのものが、なにか正解を教えてくれるわけじゃないけど、音楽を聴くことで、答えをみつける一歩を踏み出せる、そんな気がします。
だから「内なる旅」のタイトルをみて、これは、そういう音楽かな、という気がしたんですね。

今回のアルバムは、時間をかけてひとりで作ったわけですが、他の人と組んで作ろうとか、グループを結成しようとか、そういう気持ちはなかったんですか。
美音志:ひとつこのアルバムは、自分と同じようなサウンドの目標をもつ仲間をみつけるために作ったようなところはあります。こういうサウンドがやりたいんだということをアピールしたかったんです。
――なるほど。そういう意味では、まさに「名刺」ですね。
美音志:そうです。だから、親父に何年も前から「早く1枚作りなよ」って言われていて、それは中1くらいからずっと思っていて、名刺代わりに1枚作ろうと。
どういう名刺になるかは年齢を経るごとにどんどん変わっていったんですけど、で、今やっとこのタイミングで名刺ができた。という感じです。
――じゃ、これからですね。
美音志:その通りです。グループに関しては、同じような意識で演奏をしてくれる、仲間を見つけたいと思ってます。
――お父さんもひとりでずっと音楽を作ってきたわけですが、お父さんが独立した頃と、今とでは、かなり音楽をとりまく状況はずいぶん違いますね。

■「絵を描くような感覚」で音楽を創る
美音志:やっぱりひとりでやっていると煮詰まりますしね。スピード性が違うと思います。『Inner Journey』は、絵を描くような感覚で作ったアルバムだと思います。やっぱり消しゴムはよく使いましたし、絵の具も上から塗って、下書きがもう見えないくらいに。でも一応残っていて……。
――建築物みたいですね。
美音志:そういう意味では、ライブ性みたいなものはあんまり表現できなかったかな、というのはあるんですけど。だから次の作品はライブ性を、やっぱり音楽の楽しみの一つだと思うんで。
――他人の曲をやったりというのは?
美音志:うーん。今回オリジナルでやったというのは、先にサウンドの傾向が、こういうのが作りたいというのがあって、そのためには、自分の曲じゃないとアレンジできなかったです。他人の曲をアレンジしても、自分のサウンドにならないんです。

■ライブへの意気込み
美音志:最近やっとCD制作が終わってから、鈴木重子さんと親父といっしょにやったんですけど、やはりライブでしか味わえない喜びみたいなものも、最近になって感じ始めましたね。お客さんが「今この瞬間で、聴けてよかった」と思ってくれる音楽はどういうものなのか、というのを考えたりします。「もし行かなかったら損したな」というようなライブをやりたいですね。
いいライヴって、ある種の「奇跡」ですよね。
――ワン&オンリーでもあるし、分からないから面白い。失敗しても面白い。そこでしか体験できないことが大きいんじゃないかな。演奏者と聴衆がひとつになって作り出すライヴのエネルギーの凄さというのは、いくら完成度の高いCDを、高級オーディオ装置で聴いても、 感動できない何かがあると思います。
いつかCDはすべて音楽配信に変わってしまうかもしれないけど、ライヴというのはなくならないと思います、 人間である以上。ひととひとが顔を合わせたりする場所がなくなるとは思わない。CDは買わなくても、ライブには行くという人は増えるんじゃないかな。
――たまにニュースで、今、若い人たちの多くはCDを買わないとか、海外旅行にも行かないとか、という話が出てくるけど、CDがあると邪魔だという人もいるし。
美音志:CDをコンピュータで聴くと、ドライブの風切り音がうるさいので、ハードディスクに落としてます。

■アーティスト名について。
美音志:CDを作っている間の気持ちとしては、ファミリーネームをつけないで美音志というのも考えていましたけど、結果的に親父の音楽を、(自分でいうのもなんですけど)、継承しているとは思うので、やっぱりつけたいなという気持ちになったからつけたんですよね。
――もう「親父は嫌だ」の時代は収まったのかな。
美音志:そうですね(笑)。
――お父さんのリスナーはいるわけだし、その息子となると、彼らは先入観をもって聴くでしょう。どこかで何かを継承していこうという気持ちになるきっかけは?
美音志:やっぱり、さっきも言いましたけど、いろんな音楽を作ってみて初めて気づいたんです。それまではロックやりたいとか、バンドやりたいとか、あやふやな状態で、とりあえず手をつけてみないと分からないというのがあって、で、そうしたらやっぱりオリジナルなものを。
で、聴いて育ってきて、自分が表現できるもの、簡単に言ってしまえばウォンウィンツァンのギター・ヴァージョンなのかな、ということです 。何を継承したかということは、一言では言い表せないです。
――うんうん。
美音志:単純に、いいメロディであるとか、インストゥルメンタル・ミュージックであるとか。
――人生哲学というか、生き様でしょうね。親父の背中を見て、ようやく心から尊敬できる人になったということなんじゃないかな。たぶん親父に向かっては言わないと思うけど、確信を持てたということでしょう。一番の師匠が親父だったということで。
――今日は長い時間どうもありがとうございました。